おうち帰り
21年で天国にいった
くろちゃん
老猫になっても
最後まで
一人でトイレまで歩いて行った
くろちゃん
この上でしーしーしていいんで
ばあちゃんが何度も
寝ている横にオムツを敷いて
促しても
よろけながら
必ずトイレまで
歩いていった
くろちゃんは
レディだ
くろちゃんが来たんで
ばあちゃんが言った
くろちゃんにそっくりな
子猫が家にやってきたそうだ
戸を開けても逃げない
以前も同じように飼って欲しいと猫がやってきて飼ったことがある
おうち帰り
ばあちゃんが子猫に言った
もう自分が病院行くのもやっとなのに
もう動物は飼えないと
ばあちゃんは
いつも
言う
自分が最後まで飼えないのなら
どんなに飼いたくても
諦めないかん
諦めることは
増えていくかもしれない
だけど
その手放しは
みそぎのようだ
おうち帰り
子猫は
おうちに帰った
お日さまのばあちゃん
お日さまみたいな
ばあちゃん
お日さまみたいな
笑顔
お日さまみたいな
匂い
お日さまみたいな
手の暖かさ
ばあちゃんの手が作ったものは
みんな大好き
そして、とても信心
癌を患ったお父さんの友達が
ばあちゃんにお守りを買ってきて欲しいと頼んできた
信心なばあちゃんに
私もついていった
その人のためだけを想って
本殿と大師堂にお参りして
その人のためだけを想って
ミニ八十八ケ所を歩き
その人に届けるお守りを
貰って帰ってきた
今でも
その人のためだけを想えた
あの時間を
思い出す
ばあちゃんと
一緒に同じ思いで
お参りできたこと
とても暖かい
ありがたい時間
だった
最近
たまに
時々
お日さまみたいなばあちゃんが
愚痴をこぼす
それだけ
体が痛いんだ
ばあちゃんは
若い頃みんなの為に
自分の出来る限りの事をしてきた
一人で木を動かしたり
一人で重い物を運んだり
いつも体を動かして
じっとしてることはなかった
若い頃に体を酷使すると
年取ると出てくるそうだ
ばあちゃんの体が
痛くなりませんように
痛くない
ことだけ
どうか
お日さまに
お祈り
する
ごはん貸して~!
あら、
ごはんが一人分たらんわ
ちょっとおばちゃんとこ行ってきて、
ごはん借りてきて
おばちゃ~ん
ごはんあるん?
お茶碗一杯かして
あるで
あるで
もう返さんでええで
ありがとう!
小学生の頃
ごはんの貸し借りを近所でしていた
醤油やソースなんかは
当たり前
ごはんも
当たり前
貸して~
返さんでええよ~
定番文句
スーパーが近所にたくさん出来て
借りる事も貸すことも
無くなった
借りたご飯の香りは
家のご飯とかわりなかった
あの頃は
何でもかんでもが
おもしろい
よそよそしく
なかった
ごはん貸してが
無くなった頃から
少しよそよそしくなった
おばちゃ~ん
って言いながら
玄関ガラガラって開けることも
無くなった
何も聞いてないのに
隣の家の事をぼんやり理解してた
家の距離は変わらない
のびのび が
どこか
せまぜま に
感じる
ただ
寂しく感じただけ
ただ
またいっぱい会いたいと
思っているだけ
人生はずっと勉強
ばあちゃんは
ずっとお父さん(夫)の言うことをよく聞いていた
世話をよくやいていた
それでも
お父さんが全部しまいしてくれるけん楽だった
と言う
そして
お父さんが亡くなって
こんな風に言う
やっぱり人生はうまいことなっとる
お父さんがおった時は何でもしてもらって
何でも はいはい 言いよったら良かった
考えんで良かった
おらんようになって
何でも自分でせないかんようになった
人生はうまいことなっとる
楽したり怠けたりすると
必ず後でその分
頑張らないといけない時がくる
人生一生勉強
遊びも苦しい経験も
勉強のために
生まれてきたんだ
つい昨日
一生懸命考えて生きていけば
それでいいんだと
思ったばかり
この寒さが
そんな風に
思わせるのか
想いも、ある
全ては
人間のせい
なんて
よく聞くけど
以前は
生活の色んなことが
気になって
仕方なかった
車の排ガス
ネオン
コンクリート
冷房
広告の色
過剰な香り
そりゃ
今でも排ガスは苦手やけど
確かに
そうかもしれないけど
始まりは
誰かを想う気持ちから
かもしれない
土の方が好きだけど
このコンクリートも
足の悪い人には
優しくもある
いずれ
自分自身
そう思うのだろう
便利になりすぎた
世の中は
悲しいほど
自業自得で
いろんな思いが
片鱗を
みせる
何度も
何度も
ここから逃げ出そうと
していた
体が楽な場所に
逃げたいと思ってた
だけど
今居るのは
覚悟がないことと
ここに居ようと
思っているから
笑える
その覚悟はあるんだ
イルミネーション巻いていいですか?
クリスマスの
準備が始まった
お決まりの
イルミネーションが
スタンバってる
あの光が
表しているのは
星
澄んだ冬の空
無数の
星
星
星
家の中で再現して
子ども達に
見せてあげたい
そんな想いからだそう
クリスマスほど
街中のライトを消して
空を見上げるといいのに
街中を歩行者天国にして
めい一杯、夜空と冬の静けさを
味わえる日にすればいいのに
そんな風に思ってた
この灯りは
子ども達への
想い
優しくて暖かい
想い
街路樹も
人肌脱いでくれる
おそらく
街に居る木は
ちびっ子が大好きに
違いない
今年も
巻いていいですか?